今日のプログラムは全く覚えてなくて、当日になって失敗したと思った。あまり魅力的なプログラムではなかったからだ。1週間の仕事の疲れと、朝から京都のカバン屋のセールに行って疲れていたので、西宮まで行って正直聴きたくなかった。
その気持ちはハイドンの初めから吹っ飛んだ。PACとしては会心のハイドンだったのではないだろうか? 弦楽器の美しさがこのところ目立つ気がする。無駄なモノを一切削ぎ落としたような、純粋なまでの音楽。第3楽章の美しさには心が洗われました。金管は悪くはなかったが、小さなミスがハーモニーに影響してしまうのがバロック音楽。ちょっと惜しかったです。苦手なハイドンなのにいい演奏でした。
次のモーツァルトも正直じわじわと驚かされる演奏でした。グラーフさんは80歳になるとのことなので、音量は大きいわけではない。むしろ小さい。そして特別上手いと言うわけではない。もちろんプロの上手さ基準は高いけど。技術的にスゴイからといって良い演奏ではないことを証明するような、心に語りかけるような熟練の技でした。各楽章にあるカデンツァが最大の聴きどころだった。年の功はバカにできません。伴奏のオケはソリストに萎縮しすぎだった上に、決して軽快ではなかったのが不満なところか。
フルートソロのアンコールはさらに深い音色で魅了されました。音楽の深淵を見たと言う感じ。長年の修行の後に悟りを開いた僧侶でなければ奏でられないような、深い味わいに浸れました。佐渡さんが学生時代に最も憧れていたというグラーフさん。そのようなエピソードを聞いていただけに、いろいろな思いの交錯する演奏だったのではないだろうか?
さて、最後はブラームスの1番。いい加減聴きたくない曲な上に、昨年にベルリン・フィルで唖然とするような完璧な演奏を聴いている。まぁ、半年も経ったから免疫はできていると思うが・・・ 冒頭を聴いてハッとしました。PACもここまで厚い演奏を聴かせるようになったのかと。急がず堂々とした容貌には感心しました。佐渡さんもこの曲をするには相当の気合いがあったのだと思う。細部まで安定感を意識したような曲作りで、若いオーケストラだから・・・ということを忘れさせる円熟の演奏をしてくれたと思う。第4楽章はたっぷりと聴かせてくれました。ベルリン・フィル後の免疫ができてなくても良い演奏だったと思う。予想外の展開になんだかうれしくなりました。
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