この日を待っていた。クラシックを聴き始めて以来、ずっとお気に入りの指揮者である、アンドレ・プレヴィン。なかなか日本(特に関西)で聴く機会がなく、ここまで出会いが長引いてしまった。生で会ってない最後の砦ともいうべき関門だった。苦節20年、念願が叶った今日に万歳(笑)。
プログラムはオール・モーツァルト。本当のところは規模の大きな曲を聴きたかったのだが、贅沢は言えないだろう。モーツァルトを聴き終わった感想としては、「プレヴィンはやっぱり巨匠だった」ということをハッキリ認識できたことか。N響の卓越したアンサンブルの賜物というのもあるが、ほぼ完璧に近いモーツァルト像を目の当たりにできた。まさに「お手本」にふさわしい演奏だった。テンポやデュナーミクに頼るような軽々しいモーツァルトとは一線を画している。絶妙なテンポと、緻密なほどの微妙な階調性を要求していた。並みのオケでは対応できないと思うが、それらが全て「音楽」として心地よく耳に入ってくる。どの曲のどこが良かったと言うものではなく、3曲の交響曲を通して一貫したスタイルを守り続けていた演奏を聴けたことは大きい。
それでも特に鳥肌が立ったのは、第38番の第2楽章。これほどまでに美しいモーツァルトを、これまでにどれだけ聴いたことがあるだろうか?サラリと流してしまうことの多いモーツァルトで濃密な時間を過ごしたのは初めてかも。また第40番も驚きだった。最初のフレーズが始まるや否や「深い!」と思わず舌を巻いた。聞き慣れすぎたメロディなのに、音の数以上のメロディが耳に入ってくる。ここまで微妙な陰影のあるモーツァルトを聴いたことがない。あと、特徴的だったのが、各楽章の終わり方の処理が絶妙だったこと。ぶっきらぼうに勢いで終わったり、わざとらしいテンポで閉めたりする演奏とは訳が違う。曲の閉め方の丁寧さ・絶妙さでは世界最高峰と言って良いと思う(なんて表現したら良いのか)。プレヴィンは高齢のため、終始座っての指揮であり、残念ながらアンコールもなかった。派手さや激しい感情性もないが、音楽性に一層の深みが増したプレヴィンの演奏にはこれからも目が離せない。
2009年コンサートカレンダーにもどる
|