ヴィオラの名手バシュメットとあって、入りの悪い平日の京都コンサートホールもまずまずの観客数だった。1階席は8割、2階席(P席を除く)は5割、3階席は3割くらいか。マシな方だろう。
まずは、ブランデンブルグ協奏曲第6番。バシュメットは始まる前に何やらヴァイオリン奏者に対して譜面を弓でたたいていたが、何を指示していたのだろうか? ほとんどバッハを聞かないので新鮮だったが、意外にもオーソドックスな演奏に少し驚いた。バシュメットといえばカリスマ性が高いので、個性的な演奏になると思っていたからだ。ほぼ直立不動のスタイルで弾くバシュメット。その奏法が逆に音楽に対する深みを感じさせた。少人数での演奏と言うこともあり、少し物足りなさも感じた。
ユーリー・バシュメット |
次は弦楽セレナード。第1ヴァイオリン4本、第2ヴァイオリン5本、ヴィオラ4本、チェロ3本、コントラバス1本で、全員立ったままの演奏。バシュメットは奏者ではなく、指揮者として登場した。スピード感や起伏の付け方を始め、随所にバシュメットの個性的な色が付けられていく。通常とは異なり、弦楽四重奏的な機動力に富んで面白い演奏だった。それにしても、アンサンブルの緻密さは特筆モノ。これまでいろんな演奏を聴いているが、ここまで一糸乱れぬ演奏は初めてだ。チャイコフスキーの土臭さはなかったが、ロシアの冷たい風が感じられる颯爽とした演奏。しかし、アンサンブルの緻密さのためだろうか? 観客から発せられるノイズがものすごく耳に障った。そもそもジャラジャラ音を立ててアメを食べるなっちゅうの! いい加減にしてくれ!
後半は再びバシュメットがヴィオラを持って登場。今度は弾き振りだ。アンサンブルは管楽器も加わって大規模になったが、耳はヴィオラに一点集中。ヴィオラは難しい楽器だと思うのだが、いとも簡単に且つ正確で美しい音を引き出すバシュメットはスゴイの一言です。これまでに聞いたことのない豊潤な音でした。ただ、美しい曲なのだが、半分夢見心地になってしまったのは許して。。。
しかし、バシュメットの本領発揮はアンコールに待っていた。
モーツァルト ヴァイオリンとヴィオラによる協奏交響曲より第2楽章
シュニトケ ポルカ
J.S.バッハ 無伴奏チェロ組曲第1番よりメヌエット
圧巻はシュニトケ。ついに牙をむいたバシュメット! 次々に繰り広げられる超絶技巧の数々に開いた口がふさがらない。それに引けを取らないどころか応戦するオケも見事。本日最大の熱狂がホールを襲った。これだけでも来た甲斐があったというほどのもの。バロックから現代曲まで全く異なる弾き方で、幅広く対応できるバシュメットは間違いなく本当の「カリスマ奏者」です。
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