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2013年6月6日 コレギウム・ヴォカーレ&シャンゼリゼ管弦楽団
(兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール)

演奏曲目および評価

モーツァルト/交響曲第41番 ハ短調 K.551「ジュピター」
モーツァルト/レクイエム ニ短調 K.626

演奏者(指揮者・ソリスト)

ソプラノ:スンハエ・イム
アルト:クリスティナ・ハマルストレム
テノール:ベンジャミン・ヒューレット
バリトン:ヨハネス・ヴァイサー
合唱:コレギウム・ヴォカーレ
管弦楽:シャンゼリゼ管弦楽団
指揮:フィリップ・ヘレヴェッヘ

感想・短評

大事な演奏会の日なのに風邪を引いた。この演奏会は今年の注目公演の1つなので随分と楽しみにしていた。ヘレヴェッヘの指揮を聴きたいだけでなく、シャンゼリゼ管弦楽団の演奏を聴きたいし、なによりもスーパー合唱団のコレギウム・ヴォカーレを聴きたかったのだ。何とか風邪の症状を押さえこんで会場にたどり着くことができた。クラシックをよく聴く人はともかく、一般的にはあまりメジャーというほどの知名度はない今日の公演だったが、会場はそれなりに埋まっていた。先週のムターのヴァイオリンリサイタルの方が寒々としていたが不思議だ。

さて、何が注目かというと、いうまでもなく古楽演奏のスペシャリストが集結ということ。ヘレヴェッヘはこの筋のオーソリティだし、シャンゼリゼ管弦楽団も古楽演奏のトップオケ。コレギウム・ヴォカーレに関しては世界のトップ3に入るだろう合唱団だ。演目はモツレクと来れば聞き逃すわけにはいかないだろう。

前半は「ジュピター」。古楽演奏と言えば強烈で刺激的というイメージが強いと思うが、このコンビが好きな理由は、そういう刺激とは少し違うところに魅力があるからだ。古楽器なので独特のノイズを含んでいるため刺激のある音色ではあるが、このオケはとても優しい音色を出すのだ。決して強烈な印象は受けない。ヘレヴェッヘも奇抜な解釈を振り回すことなく、とても自然なテンポで自然に音楽を流す。実に心地よく聴ける古楽演奏団体なのだ。この魅力のため、このコンビのCDは何枚も買って楽しんでいる。「ジュピター」も非常に丁寧な演奏で聴かせてくれた。特に第3楽章が一番美しかっただろうか?そんな気持ちが伝わったのか、第3楽章をアンコールとして演奏してくれたのはうれしいことこの上なかった。

さらに魅力を倍増させるのは合唱が入った曲だ。後半はモツレク。この曲を歌ったことがあるだけに、どうしても自分のパートばかりに耳が行ってしまうが、この合唱団は素晴らしくブレンドされているため、各パートが溶け合って心地が良い。オケ、合唱、ソリスト、すべてのバランスが絶妙で何一つ飛び出ることがない。ここまで統一感のある演奏はそうそう聴けるものではない。最高のブレンドコーヒーを嗜んでいる感覚だ。うまい。やはり最高潮は「ラクリモサ」だろう。悲しみ、祈り。この意図的ではない非常に繊細な演奏に全身の鳥肌が立った。決して風邪のせいではないと思う。前もって予想はしていたが、残念だったのは観客である。例にもれず、最後はフライング気味の拍手、それにブラボーの掛け声。あきれてしまうにもほどがある。レクイエムを教会音楽と考えると、そんなところでそのような行為に至ることがあるだろうか?全く意味が分からない。余韻を返してくれ。

そんな無礼な観客を前にしてアンコールが演奏された。こちらも予想通りというか期待通りの「モーツァルト/アヴェ・ヴェルム・コルプス」だった。これは過去聴いた中でも最上級の演奏だった。おそらく現代の世界一演奏と言っても過言ではなかったのではないだろうか?合唱とオーケストラのふかふかベッドに埋もれているような感じで、とても優しく、とても心地が良かった。そんな気分をぶち壊したのはやはり観客のフライング気味拍手とブラボーである。ほんと、このホールに来る観客は音楽を知らない人が多い。こっちの余韻も返してくれ。

ヘレヴェッヘにサインをもらいたかったが、体調もすぐれないこともあり、観客の暴挙を記憶から消して余韻を楽しみながら帰途につきました。

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