今年一番注目していた演奏会だ。フックスさんが出るというだけでなく、京響が誇るクラリネット陣と、日本を代表する奏者も出演するとあらば、クラリネットを愛する人なら飛び上がるほどの大イベントだ。開場20分前に着いたが、すでに50人以上が列をなしていたことからも注目度が良く分かる。小ホールとはいえど、会場はほぼ満席。
前半はフックスさんの単独リサイタル。昨年のリサイタルでは万全な演奏が聴かれなかったが、今日は絶好調だった。相変わらず息の音が強いので、どうも生演奏は苦手なのだが、やっぱり天才的な音色を聴かせることは間違いない。世界超一流は究極の最弱音を奏でることに驚愕した。プーランクは「速っ!」と思わず口に出そうになるほど速かった。若干崩し気味の演奏スタイルで、独特のプーランク演奏だったのがユニーク。第2楽章はピアニッシモの美しさ、第3楽章は圧倒的なテクニック。この曲の見本というより、完全に自分の曲として表現してしまっているので、もはや独自の世界ですね。ブラームスも完全にフックスさんの独壇場でした。やはり第2楽章の叙情性はたまりません。本当のブラームスを聴いたという感じでした。
さらにもって、アンコールが圧巻でした。
Michele Mangani/Pagina d'albana
モンティ/チャールダッシュ
モーツァルト/メヌエット
モンティでは信じられないほどの超絶技巧もさることながら、もはや耳ではとらえられない究極の弱音には正直仰け反るばかり。。。クラリネットはすでに体の一部なのですね。モーツァルトに至っては本場過ぎてアンコールにしてはもったいないくらいでした。
後半は日本を代表する奏者たちによるクラリネットアンサンブル。七重奏はいきなり聴かせてくれました。これぞ見本と言える息ぴったりのアンサンブル。クラリネットを学んでいる人にはとても参考になったのではないでしょうか?(私なんぞには何の技術も盗めませんが!)。実に清々しく精緻な演奏でした。続く京響奏者による四重奏もなかなか聴く機会がないので貴重でした。ある奏者が第4曲冒頭で数小節出番を間違うハプニングもありましたが、何の影響もなく息の合ったキビキビとした楽しい演奏でした。フックスさんを聴いた後なので欲を言えば、もう少し厚みというか、濃さがあればなと思いました。
この後はフックスさんも交えての夢のアンサンブル。モーツァルトは、フックスさん、ヌブーさんがB♭管、ブルックスさん、鈴木さん、伊藤さんがバセットホルンの編成。やはりドイツ仕込のモーツァルトは格が違いました。ドボルザークからはクラリネットが勢揃い。ヌブーさんがE♭クラリネット、フックスさん、ブルックスさん、玄さんがB♭管、小谷口さんがアルトクラリネット、鈴木さんがバセットホルン、伊藤さんがバスクラリネット、筒井さんがコントラバスクラリネットの編成。見るだけでも圧巻ですが、オーケストラ並みの多彩な響きには正直驚きました。最後の曲は小谷口さんだけがB♭管に持ち変えた編成でした。第1曲は瞑想感に富んだ曲で、ぜひBGMでかけ続けていたいくらいの美しい曲でした。第2曲で曲想は豹変しましたが(笑)。
演奏者も楽しくてならないという雰囲気がひしひしと伝わってきました。特にアンコールでは全員トップギアに入りっぱなしでした(2回やった)。
アンダーソン(酒井格編曲)/クラリネットキャンディ
何でもフックスさんはほとんど初見だったらしいですが、超絶技巧をさらりとこなすところは化け物ですね。。。真のすごさを見たという感じです。考えうる奏者が集っての夢のクラリネットアンサンブル。ないと思うけれど、またやってもらいたい。できることならもっと多くの人に聴いてもらいたいと思わざるにはいられない演奏会でした。何から何まで、小谷口さんお疲れ様でした!
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