PACオケの定期演奏会は第1回以来なのでとても久しぶり。発足してこの1年でいろいろな評価がされているが、個人的には新オーケストラとしてはかなりレベルも高く、面白い演奏を聴かせてくれるオケだと思う。今日は、佐渡さんが満を持して演奏するマーラーの「悲劇的」。冒頭でこの曲への思いや、聴き所を事細かく解説してくれた。それだけに演奏自体非常にわかりやすくなりました。
第1楽章、第2楽章(スケルツォ)は至って標準的な演奏。ただ、弦楽器の厚みは素晴らしい。ヴァイオリンの安定感は関西のオケの中でもピカイチ。金管は健闘していたものの、若干の不安定要素があり、同じフレーズでミスをしたトランペットはしきりに首を振っていた。。。
「さすが!佐渡さん!」と思ったのは第3楽章と第4楽章。アンダンテをここまでゆったりとしたテンポで歌った演奏は聴いたことがなかった。バーンスタインゆずりの面を垣間見た楽章だった。そのスローテンポが逆にこの穏やかな楽章の中に不気味な要素を覗かせていたようで意味深かった。
そして第4楽章。この楽章の目玉は何といってもハンマーの登場シーンだが、ここでも佐渡さんはバーンスタインの行ないを踏襲した演奏を披露した。通常2回しか叩かないハンマーを3回叩く方法をとったのだ。死への意識の強かったマーラーが、このハンマーで暗示される悲劇・破滅が恐ろしくて3回目を削除した部分。そのとどめを佐渡さんは刺してしまった! ハンマーはステージ右奥の高台に設けられ、あたかも奏者が断頭台に登っていくような雰囲気さえ漂わせていた。その3回目のハンマーの部分でのスローテンポは前代未聞。強烈に奈落の底に落とされるかのような破滅がホールを支配した。マナーが良くないと評判(?!)の兵庫県立芸術文化センターのホールは曲が終わった後も10秒近く凍てついたまま拍手がなかったくらい。
演奏そのものよりも佐渡さんのタクトにすべてが委ねられた演奏。バーンスタインが生きていたらこの演奏をどのように評価するだろうか。私は喜んだのではないかと思う。
新年1回目の演奏会から暗い雰囲気で終わるのは良くないと思ったのか? 天国的で穏やかなアンコールを演奏してくれた。
武満徹 「波の盆」より終曲
今日の演奏会はPACオケの定演だったけど、メンバーはほとんどPACではなかった・・・ 107人の出演者中、客演奏者は67人。おまけにクラリネットのトップは大フィル首席のブルックス・トーンさんだったり。これだけ客演が集まっても素晴らしい演奏を聴かせてくれるのだからプロ奏者はたいしたもんだ!
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