初めての「びわ湖ホール」だ。何度も足を運びたくなる、かなり立派なホール。オープニングテーマ曲はバッハの前奏曲。ホールがいつもと違うためか、非常に暖かな響きが京響より醸し出された。
今回の目玉はブリテン。長野さんによるナレーション付きという豪華さ。オケのほうは木管がベストメンバーというわけではなく、もう少し突っ込みが欲しかったがまずまずの出来。遅いテンポでじっくり聴かせるあたりが若杉さんの青少年への配慮か。トロンボーン紹介のところでナレーションが遅れたため間が空いて、若杉さんが困っていたのが面白かった。全体的にしっかりと構成が組み立てられていたのが良かった。
モーツァルトは管と弦の2曲。軍配は管楽器。「13管楽器によるグランパルティータ」ではクラリネットのレーニが魅力を最大限に引き出してくれた。京響でモーツァルトを聴くのは初めてだったが、木管は良かった。一方「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」は弦の豊かさが欠けるために、ただでさえ「小さな」曲がいっそう小じんまりと聴こえてしまった。チェロを増やすくらいのことが必要だったのかも。
ベートーヴェンは、各表情、背景、鳥の鳴き声などを1つずつ分解して紹介するという徹底ぶり。その後、楽章を通して演奏。こういう演奏は学習になるし非常に曲が掴みやすくなる好企画。
問題の「川の流れのように」。最も期待していなかったが、最高の出来。京響によるポップスがこれほど素晴らしく楽しいとは思ってもいなかった。若杉さんが大ハッスルしていたのも大いに楽しめた要因の1つ。
メンデルスゾーンは金管陣の若干の物足りなさを感じたが、弦と木管の清々しさが魅力的であった。女性的な始まりで徐々に力強さを増し、盛り上がりではいつの間にやら男性的な響きと変化していたのは若杉さんの手腕の凄さか。
ドビュッシーは木管はいうまでもないのだが、弦楽器が細く、鮮明に響いてしまうために逆にドビュッシーらしい「もやっ」とした感じを表出できていなかった。
武満さんの曲は素晴らしいの一言。オケの充実はさておき、ナレーションの絶妙なうまさ。これ以上のナレーションは考えられないくらい。これほど引きつけられる日本の近代曲は多くない。
最後はチャイコフスキーの大序曲「1812年」の予定であった。プログラム変更で「威風堂々」になってしまった。非常に残念だった。おまけに威風堂々の出来も残念な出来であった。いかんせん響きが「薄い」のである。ということは文字通りの威風堂々にはならない。同じ箇所で金管が同じ間違いをしていたのも頂けなかった。
今回の演奏会は非常に楽しめる要素がふんだんに入っており、人の入りは良くなかったが(6割くらい)、また次回も訪れたくなるような内容だった。
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