大植さんのラストコンサート。センセーショナルな音楽監督就任から9年。今からしてみれば本当にあっという間だった。朝比奈さんが亡くなったのも記憶に新しいのでそんなもんかな?就任記念の演奏会には行ったので、最後も行かないと気が済まなかった。アンコールの結果とはいえ、最後にしては最高にハードルの高いブルックナーの8番だ。過去に名演奏を披露しているだけに、これまでの集大成として大いに期待できる。会場は空席がチラホラあるとはいえ、久々に補助席まで登場するほどの完売公演だ。
演奏の方は大植さんにしては素直な演奏だった。肩すかしでもあり、大フィルの伝統を重視した意思表示でもあったように思う。ただ、オケも相当に入れ込んでいたのか、ちょっと流麗さやゆとりがなく固かった。時折和音の響きが美しくなかった。特に木管セクションは今一つかな?京響に慣れているので仕方ないともいえる。
本領発揮は第2楽章からか。大フィルのブルックナー演奏は、細部まで美しいとは言い難いのだが、風格はどのオケにも負けない魅力がある。曲が進むにつれ、大フィルの伝統的なブルックナー演奏が炸裂する。もうちょっとブルックナー休止をしっかりしてもらいたいところもあるが、満足できる良い演奏だったと思う。惜しむらくは、最後の音が消える前に拍手が起きてしまったことか。今日は大植さんのラストコンサート。余韻というものが重要なことがわからないのだろうか?聴衆の無粋な行いにガッカリだった。
しかし、その後は拍手は鳴り止まず、大植さんは何度ステージに戻されただろうか?団員がはけた後もまだまだ続いた。いつしか気付くと、帰る人も少なく、2階席までほとんどの人がスタンディングオベーションをしているという状況に。朝比奈時代にも見たことのない光景だ。大植さんも、ステージを降りて客席に乱入するという、会場が一体化した特別な時間となった。
演奏もさることながら、感謝と感激が交錯する会場の雰囲気に自然と涙がでてしまった。大植さんありがとう。そしてお疲れさまでした。
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