兵庫芸術文化センター挙げての一大イベントもついに千秋楽。会場は超満員で膨れ上がり、観客・出演者ともに熱気の帯びた演奏会となりました。前々から栗山さんの演出について特に話題として取り上げられていた。今年で80歳になる日本オペラ界の巨匠が演出するということだけでも話題になるのでしょう。指揮は佐渡さん、そして演奏はPACオケ。いろいろ期待感を膨らませる手法が兵庫芸文はウマイです。他のホールも見習わなければね。
期待(想像?)とは少し異なり、余計なものを排除したシンプルな舞台セット。白木作りで障子戸の家と、満開の桜の木、そして長崎らしく坂道が1本というもの。日本人による日本題材のオペラということで、とても「わび」「さび」を感じる品の良い舞台でした。出演者の衣装もごく自然な和服(西洋人除く)で違和感なくストーリーに没頭できました。
第1幕の見せ場はやはり後半の「ホンゾの怒り」の場面あたりだろう。話が急展開するだけでなく、音楽も劇的に盛り上がる。実力が高いPACオケならではの芯の太い演奏にドキドキした。第1幕では多くの出演者が出てくるが、シャープレス役のキュウ=ウォン・ハンの歌唱力が際立っていたと思う。蝶々さんが登場した際の合唱はいまひとつだったのがもったいない。
第2幕になると歌手人のテンションも上がってきたのか、前半よりも迫真の演技の続出。蝶々さんの演技もさることながら、スズキ役の小山さんは尻上がりに素晴らしくなっていった。ピンカートン役のマッツは上手かったものの、何か物足らず、準主役という位置づけに感じられなかった(カーテンコールでのマッツ氏への拍手も芳しくなかったし)。
演出上、何度か回り舞台を使用していたが、家を回転させるだけのあまり意味がない使い方だったのが惜しい。もっと演出的に使って欲しかった(ピンカートンが再来するシーンでは動きがあって良かった)。オーケストラ演奏の方はほとんど文句を付けるところはないほど充実していた。劇的に鳴らすところはしっかり、抑えるところもしっかりと。安定感に加え、新鮮で張りのある若々しさが良かった。もう少し歌心があると面白かったと思うのが贅沢なことかな?
しかし、このオペラ、あまりに話が生々しい悲劇で、観劇後の重苦しい気分はどうにかならないものだろうか? ブラボーの嵐は佐渡ファン、PACオケファンだろうから特に気にならなかったが。会場では、なぜここまで盛り上げるのか分からないけど、蝶々夫人グッズも多数取り揃えられていて、それなりに売れていた。ストーリーは暗いのにイベントとしては活気があって面白かったです。
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