サイトウ・キネン・フェスティバルを聴きに来るには3回目だが、松本文化会館に足を運ぶのは今回が初めて。まつもと市民芸術館は街中にあるので非常に便利だが、松本文化会館はバスで移動しなければならず、少し不便な場所にある。幸い、浅間温泉の近くということもあり、温泉を楽しんだ後、コンサートを聴くという贅沢なコースになった。
会場となる松本文化会館は市民会館みたいな施設をイメージしていたが、テレビで見るよりも立派な施設で、2階の後部座席であっても、とても見晴らしが良い。さらには音響も良いではないか。ちょっと見くびってました。。。会場内にはNHKハイビジョン生放送用のカメラが何台も設置されており、こいつが毎年いつもの映像を撮っているのかと思うと、少し緊張してしまった。
今回はパンフレットを買わなかったので出演者の詳細が分からないが、主要なポジションにはいつものように有名奏者が並んでいる。それだけでもかなり期待してしまうのだが・・・。さて、最初の「道化師の朝の歌」は、さすがサイトウ・キネンと思わせるだけの、豊かなピッチカートから始まる。ただ、力強さを感じるものの、ラヴェルにしてはちょっと重すぎる響きか。複雑な曲だと思うが、ミスもチラホラあって万全とは言いがたかった。しかし、やはりゼーガースのティンパニは強烈やわ。
2曲目は「シェエラザード」。リムスキー=コルサコフなら有名だが、ラヴェルの「シェエラザード」はなかなかにマニアックだ。何度予習しても覚えきれなかった。断片的な記憶しかなかったのだが、本当に素晴らしい演奏でした。さすがはフランスモノに強い小澤さんです。ソプラノは安定感・安心感があり、2階席後方にもしっかり届くほど芯の通った歌声だった。オケは文句が付けられないほど上手すぎで、第2曲、第3曲においてのフルートは特に絶品だった。オーボエの宮本さんも文句なしです。第3曲では弦楽器の天上の美しさにすっかり入り込んでしまい、最後静かに消え失せるところでヨダレが出そうになりました(笑)。これがサイトウ・キネンの弦の恐ろしさか。
後半はブラームスの交響曲第2番。「サイトウ・キネンといえばブラームス」というのは、もう20年も前の話だ。弦楽器の充実振りからすると当然の結果なのだが、20年経ってメンバーも入れ替わった現在、どのように変化を遂げているかを図るには絶好の曲目でもある。とはいえ、初期のサイトウ・キネンによるブラームスは第1番と第4番くらいしかCDで聴いたことがないので比較できないんだけど(笑)。演奏はやっぱり弦楽器が超ウマでした。問題は金管でしょうか。もちろん悪いわけではないのだが、昨年聴いたベルリン・フィルなどと比べると圧倒的に違うのは歴然としている。日本のオケどこにも言えることだが、日本的な金管像(つまり特長)を早く確立してもらいたいところである。それは置いといて、聴き応えのある素晴らしい演奏だったと思いますが、いかんせん、小澤さんの指揮は単調に感じた。奇をてらわない正攻法の演奏といってしまえばそれまでだが、あまり特長がない演奏にも思った。やはり昨年のラトル=ベルリン・フィルなんかは終始面白く聴けた。それでも、第3楽章の木管は存在感抜群だったし、第4楽章はかなりの白熱した演奏で盛り上がった。ゼーガースのあのティンパニの強打は普通のオケでは受け入れられないと思うので、やっぱりサイトウ・キネンは大したオケなんだろう。文句を言いながらも、世界に通用するスーパーオケは侮れません。
終演後は、諏訪湖の夏花火の最後を飾る「サマーナイト・ファイヤーフェスティバル・フィナーレ」を見に行くために急いで会場を後にした。来年の夏も、サイトウ・キネンという素晴らしい花火を堪能したい。
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