サイトウ・キネン・フェスティバルを皮切りに、このところ「小澤征爾三昧」が続いている。今日は演奏会という訳ではないが、ローム主催の音楽セミナーの見学会に参加した。1992年より続いているこの音楽セミナーでは、指揮者養成のクラスが一昨年から行われている。小澤征爾、湯浅勇治、三ツ石潤司の3氏による指揮者クラスなので、見学するだけでもかなりの勉強になるはずだ。今回は小澤さんの指揮者クラス見学会の抽選に当たったため行くことができた。
最初はフォーレのレクイエム。広島の原爆50周年で演奏することを斎藤秀雄先生と約束していたらしいが、その機会を逃してしまったために、今年の60周年で実現させることになったとのこと(10/21に広島グリーンアリーナで開催)。そのこともあり、今回取り上げることになったらしい。歌の生徒3人による演奏だが、ラッキーなことに小澤さんの指揮で聴くことになった。3人とも三者三様で、同じ曲を聴き比べると面白い。その後、同曲を女性の陳さんが指揮をして演奏。4回同じ曲を聴くことになるとは思わなかった(笑)。しかし、同じ曲なのに小澤さんが振ると音楽に深みが出るんだから驚きだ。
さて、次のベートーヴェンで本格的に指揮のレッスンが始まる。生徒は18歳の鬼原さん。ピアノ専攻で指揮も志しているとのこと。「のだめカンタービレ」の千秋真一とイメージがかぶるが、容姿は違った(苦)。まずは第1楽章。オケの中に入り指揮者を睨み付けるように見つめる小澤さん。曲に反してどこか堅くて窮屈な指揮。中間部も退屈で、小澤さんも数々の指示を飛ばす。終盤では湯浅さんも混じり多くの指摘が入る。しかし、第1楽章の演奏を終えると笑顔になる小澤さん。
次は第3楽章の練習。このスケルツォの入り方に細かな指示が飛ぶ。息の仕方や長さまで指摘されるとは思わなかった。確かに、小澤さんが振ると頭が揃うだけでなく、音楽に余裕が出て安定感がます。息の仕方1つで音楽が変わってしまうということを見せつけてくれた瞬間だ。
第2楽章の練習では、2章節ごとに区切るように演奏してしまうことに指摘が入る。3日ほど前に、星野仙一さんが練習場に顔を出したらしく、その時にチャイコフスキーの弦楽セレナードを少し振ってもらったという。そんな感じにならないようにとの指摘だった(笑)。
第4楽章は、女性指揮の陳さん。曲のせいもあるのだが、一所懸命さは伝わるのだが、すごく堅い指揮。常に力が入りっ放し。小澤さんが振ると適度な脱力感が曲に余裕を生む。振った後の力を抜くように指示されると、アラふしぎ。明らかにオケの演奏にも力みがないものに聞こえた。指揮者のちょっとした振りの違いでこんなに音まで変わってしまうとは思いませんでした。
小澤さんはもっと練習を続けたそうだったが、公開練習は15時半できっちり終わるように湯浅さんが仕切っていた。もちろんこれは公開練習であり、休憩の後も練習は続くとのこと(セビリャの理髪師をするといっていた)。指揮者の練習というもののほんの一部に過ぎないのだと思うが、音楽を聴く上(指揮を見る上)でのポイントを学ぶことができたような気がする。貴重な体験でした。
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