毎年1月4日恒例のお正月イベント。今年も関西財界のVIPが大勢来場し、普段の演奏会より年齢層は高く格調高い雰囲気がした(気のせい?)。今回の指揮は大友さんではなく岩城さん。また一味違った演奏を聞かせてくれるに違いない。
オープニングは芥川氏のお祭り騒ぎな曲。日本の現代曲といえど、この曲は昨年の6月に京響で聴いているので楽しみだった。演奏の方は、さすがに日本のトップ奏者の集まりとも言える安定したもので、決して刺々しい「現代曲」にはならず、耳の心地よい響きを湧出していた。ただし、パワーはさすがです。昨年の京響の演奏は若々しさというか、新鮮さみなぎるきらびやかなものだったのに対して、JVSOは地中の底から吼えるような力強さ(分かりにくいな・・・)。本当に安定した演奏でした。
前半のメインは川久保さんのヴァイオリンによる2品。ショーソンの曲は聞いたことがないのでなんともいえないが、川久保さんの実力がどれほどのものか分かった。はっきり言って、諏訪内さんを聴いたとき以来の衝撃でした。何といっても、音に力強さがある。それでいて繊細で表情が豊か(もちろんテクニックは当然ね)。演奏会前のプレ・トークで、岩城さんが川久保さんのヴァイオリンに惚れ込んでいるという話をしていた。その理由はよく分かった。日本を代表するヴァイオリニストの1人といって間違いないでしょう。昨年のベルリン交響楽団では体調不良のため代役になってしまったのが、今思うと残念でならない(代役も上手かったですが)。「ツィゴイネルワイゼン」では、そんなヴァイオリンに加えて、岩城さんの超ロマンティックな指揮っぷりが曲の面白さを指数関数的に増大させてくれた。ただの早弾きの印象しかない曲を、ロマン派の一大巨塔のような構造物として作り上げていた(ある意味しつこい演奏とも言えるが・・・)。いやはや、新年早々心の晴れる演奏が目白押しです。ここでもう1曲サービスがあった。これもすごいテクニックでした。
パガニーニ編 ベニスの謝肉祭
さて、後半はチャイコフスキー。特に第4番は好きな曲なのに、結構演奏機会の多い曲なので少々飽き気味。。。と、言わせないのが岩城さんだった! 壮大なスケールで開始すると、後はさすが巨匠ともいうべきゆとりのある曲運び。若手の指揮者とは一線を画します。テンポも変幻自在で、第1楽章の終盤は劇的な変わりように、岩城さんの本領を見た!という感じでした。第3楽章はもはや神の領域。ほとんど指揮を放棄し、視線と表情だけでオケを操る荒業に出た。体の不自由さもあるのだと思うけど、巨匠だからこそなせる技なのです。これも若手がやると無視されるだけでなく崩壊します(笑)。そして、圧巻の終楽章へ。ただでさえ迫力のある曲なのに、このオケといったらパワー底なしです。最後の最後まで衰えることなく鳴らしまくってくれた。岩城さんも穏やかな顔して、たやすく最強音や最弱音を要求するんだからたまったもんじゃないだろう。最後も加速的に速めていき、熱狂的に曲を閉じた。年齢層が高い演奏会だったので「ブラボー」の叫び声こそ少なかったが、まさに「ブラボー!」でした。しかし、岩城さんの指揮に完璧に応えたJVSOはすごいオケです。ホルン、トランペットをはじめ管楽器の上手さが光ったチャイコフスキーだった。
アンコールは例年のお決まり。2005年は阪神の優勝の年だったので豪華バージョンを期待していたが、前々回ほどの豪華さではなかったのが残念なところかな。観客の余計な手拍子もあったし。
ドーレ(上芝はじめ編) すみれの花咲く頃
古関祐而(大島ミチル編) 六甲おろし
JVSOの上手さだけでなく、岩城さんの本領を目の当たりに出来たのが今回の最大の収穫だったように思う。あぁ、1年初めの演奏会から今年のランキング上位の演奏会に出くわしてしまった。
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